そう言って颯斗は先輩に向かって少し頭を下げてから、咲の手首をスッと握った。 「ったく。表のチャイムを鳴らせって言ってるだろ。いつも裏から入ろうとすんな」 「ご、ごめん」 そんな颯斗とのやり取りを、先輩はどんな顔をして見ていたのかわからなかった。 動揺といたたまれなさと安心がいっぺんに襲ってきたから。 だから咲は、後ろを振り返ることができなかった。