完璧からはほど遠い




 結局成瀬さんの提案通り、私のテーブルは買わず下調べだけ行った。サイズ感が合うものを写真で納め候補に入れておく。そして成瀬さんのテーブルだけ購入した。

 一階に降りて会計をするとき、彼は忘れることなくお皿も購入してくれた。当然のように二枚手にして会計に持って行った。今独り身な自分としては、一枚でよかったのだが、もし成瀬さんが本当に家に来るのなら……その皿を使うかもしれない、なんて邪な気持ちを持って黙っていた。



「なんか食べる?」

 ゆっくり家具屋を堪能した後、気が付けば昼時になっていた。

 店を出たとき成瀬さんが私に尋ねる。頷いて返事をした。

「はい、昼時だし何か食べましょうか」

「腹減ったよね、何食べたい?」

「えっと……なんでもいいですけど……」

「ピザ好き?」

「はい、好きです」

「近くに美味しいイタリアンあるんだって! 行かない?」

「はい、ぜひ!」

「前仕事先の人と雑談してて聞いたことあって。いこっか」

 成瀬さんは迷うことなく足を踏み出す。私もその隣に並び続いた。

 街中で多くの人たちとすれ違う。時折女性は成瀬さんをチラチラと眺めていた。ああ、どこでも注目を浴びる人なんだなあとしみじみ思う。

「成瀬さんいろんな人から見られてますね」

「え? 俺なんか変?」

「変と言いますか……というか、結構人多いから、会社の人たちとかいたらどうしようって緊張してます」

「別にみられてもいいじゃん、ちょっと買い物に来ただけですーって言えば」

「成瀬さんと二人で買い物に来たがってる女性がどれくらいいると思ってるんですか」

 無自覚モテも罪なものだ。女のどろどろとか知らないのかなあ。

「まあ会社とは結構離れてるし大丈夫でしょ。あ、あっちだよピザ」

 成瀬さんが指をさした先にあったのは、小さめのレストランだった。真っ白な壁と看板にシンプルなイタリア語と思しき文字。可愛らしいお店にぐんと心が跳ねる。

 隠れた名店、という感じ。落ち着いて食事できそうだし、いいお店だ。