完璧からはほど遠い

 一年前、付き合おうといわれた日、私は本当に嬉しかった。喧嘩はするけど基本仲がいいと思っていたし、だからまさかあんな終わりを告げるなんて思ってなくて。

 もう過去のことで忘れたこと、とずっと思っていたのに、いざ顔を見ると色々思い出してしまった。やはり一番は怒り。ここ最近静まっていた怒りが一気に込み上げてくる。

 私に声をかけるなんて、どういう神経?

「大丈夫です。持ってるので」

 私は冷たくそういうと、傘を取り出してやや乱暴に開いた。すぐさま歩き出す。それを追って大和が隣に並んできた。

 雨が傘に落ちる音は大きく響く。それに負けじと、大和が声を張って私に言った。

「志乃、本当にごめん」

「別にいいよもう終わったんだから。それよりもう話しかけないで」

「連絡ずっと無視してるだろ」

「当たり前でしょ、なんで私があんたの連絡を見なきゃいけないの」

 イライラしながら答える。それでも大和は負けじと隣に並んだまま続けた。

「あの日、ほんと魔が差したっていうか……そんなつもりじゃなかったんだけど、酒に酔って、それで」

 私は足を止めて横を向く。傘から見える大和の表情がなんだか苦しそうで、それがなお自分の怒りを助長させた。苦しいのは私じゃないか、どうして大和がそんな顔してるの?

「言い訳はいいって。そのあとも付き合ってるんでしょ? 高橋さんは色々アピールしてくるし、沙織も二人が一緒にいるの見かけたって言ってたよ。別に邪魔しようとか思ってないから、お願いだから関わらないで」

「もう別れたから!」