「え、どうしたの?」

「い、いえ、引っ越しはもういいか、と思っていて」

「引っ越し、っていうか、俺の家に来るでしょ?」

「え?」

「え?」

 お互いぽかんとしたまま時間が流れる。

 ちょっと待って、アパートを引き払って成瀬さんのおうちに? 今は身を隠すということもあって泊まらせてもらってるけど、いずれはまたあのアパートに帰るつもりだったのだが。

 成瀬さんは不思議そうにしていた。

「だって言ったじゃん、まだまだ油断しちゃだめだよ。あいつ逆恨みしてまた来るとも限らない」

「あ、それもそうですね……」

「だから俺の家に来ればいいじゃん。あ、狭いかな? それならまた二人で引っ越し先探そう。佐伯さんしばらく一人で外出禁止ね。出勤も退勤も俺と一緒に。友達と遊びに行くときとかも送り迎えするから」

「え、ちょ、ちょっと待ってください追いつかない!」

「うそ、佐伯さんもそのつもりだと思ってたよ」

 それってつまり、もう同棲なのでは!?

 頭の中がぐるぐると混乱する。だって、成瀬さんとは気持ちが通じ合ったばかりで、お付き合いしてる期間だってまだたった三日じゃないか。いや、確かに彼が言うように危険から逃げるには当然の対応とも言えるけど、さすがに成瀬さんの負担が大きすぎる。

 私は首を振った。