「あのですね、俺と志乃が付き合ってたことはご存じですよね? 別れ方にやや問題があった自覚があります、その後話し合いたくて相手にコンタクトをとる、男女によくあることですよ」
「問題は一度目、嫌がる佐伯さんの声を無視して無理やり上がり込んでいること、その次は何時間も待ち伏せして彼女に恐怖心を与えたことです」
「い、いや、待ってください、一度目は確かに行ったけど、思えば二回目は行ってません、何かの間違いですよ。志乃の虚言じゃないですか?」
私の方を見てそしらぬ顔でそう言い放った。目が合った途端怒鳴りつけてやりたい衝動に駆られる。見間違いなわけがない、次の日『なぜ家に帰ってこなかった』という発言もしていたじゃないか。
だが私が口を開くより前に、成瀬さんが違う用紙を取り出した。それをまた佐川部長と大和の前に置く。
「そういうバカげた言い逃れが出来ないように、証言を取りました」
「証言?」
「佐伯さんの住むアパートの住民たちに話を聞いて回りました。その中で二名、確かに彼が佐伯さんの部屋の前で待っている様子を見た人がいます。それぞれの証言から大体の時間を推測すると、少なくとも二時間半は待ち伏せしていたことになります。この寒空の中よくやるなと感心したいところですが、これは女性からすれば恐怖の行為そのものでしかありません」
淡々と事実を述べる。佐川部長は頷いた。
土曜日成瀬さんが出かけていた理由の一つがこれだったらしい。わざわざ私のアパートに足を運んで一部屋ずつ訪問して回ったのだとか。その行動力に感嘆する。
大和は黙り込んだ。追い打ちをかけるように、さらに成瀬さんが言う。低い低い声だった。
「問題は一度目、嫌がる佐伯さんの声を無視して無理やり上がり込んでいること、その次は何時間も待ち伏せして彼女に恐怖心を与えたことです」
「い、いや、待ってください、一度目は確かに行ったけど、思えば二回目は行ってません、何かの間違いですよ。志乃の虚言じゃないですか?」
私の方を見てそしらぬ顔でそう言い放った。目が合った途端怒鳴りつけてやりたい衝動に駆られる。見間違いなわけがない、次の日『なぜ家に帰ってこなかった』という発言もしていたじゃないか。
だが私が口を開くより前に、成瀬さんが違う用紙を取り出した。それをまた佐川部長と大和の前に置く。
「そういうバカげた言い逃れが出来ないように、証言を取りました」
「証言?」
「佐伯さんの住むアパートの住民たちに話を聞いて回りました。その中で二名、確かに彼が佐伯さんの部屋の前で待っている様子を見た人がいます。それぞれの証言から大体の時間を推測すると、少なくとも二時間半は待ち伏せしていたことになります。この寒空の中よくやるなと感心したいところですが、これは女性からすれば恐怖の行為そのものでしかありません」
淡々と事実を述べる。佐川部長は頷いた。
土曜日成瀬さんが出かけていた理由の一つがこれだったらしい。わざわざ私のアパートに足を運んで一部屋ずつ訪問して回ったのだとか。その行動力に感嘆する。
大和は黙り込んだ。追い打ちをかけるように、さらに成瀬さんが言う。低い低い声だった。



