完璧からはほど遠い

「突然過ぎて全然ついて行けません!」

「何言ってんの、昨晩散々人を煽っておいて」

「あ……それ、は」

「今更撤回はなしだよ?」

 やや首を傾けて挑発するように言ってくる成瀬さんに、つい後ずさりした。嫌なわけじゃない、ただどうしていいか分からないだけ。

「なんていうか、成瀬さん、普段犬っぽいなって思ってたのに、全然違う顔してます!」

「だろうねえ、犬っていうか狼だよねえ」

「おおかっ……」

「ほら、俺薬局行ってきた、って言ったでしょ?」

 はっとして、床に置かれた白いビニール袋を見た。そうだ、私が頼んでいたコンディショナーを買ってきてくれた成瀬さん。それは、つまりあの中には、コンディショナーだけじゃなく……



 ずいっと彼が顔を寄せてくる。いつもとは違う、雄の顔。

「明日休みだし、今日は朝まで起きてても大丈夫だね」

「朝!?」

「まあまずは飯とか風呂とか入ろうか」

 涼しい顔をしていう彼に、ああ一体いつまで私は成瀬さんに振り回されるんだろう、と一抹の不安を抱いた。私はいつだって、彼には敵わない。