完璧からはほど遠い

 彼が一体何を考えているかはまだ分からないけど、その内容は重要じゃない気がした。成瀬さんが私のために色々考えて、守ろうとしてくれてる。その事実が嬉しくてたまらなかった。普段ソファから一歩動くのも嫌なくせに。

 笑い返したとほぼ同時くらいに、突然成瀬さんが私の頬に手を触れた。急に感じたその体温にびくっと反応した瞬間、心の準備も追いつかないまま、彼の口が私の唇を覆った。全く予想外の突然のキスだった。

 体はがちがち、驚きで息も止まり、ただ棒のように立ち尽くした。

 しばらくして離れた成瀬さんは、優しく口角を上げている。私はと言えば顔を真っ赤にして、パクパクと金魚のように口を開けている。

「はは、凄い顔真っ赤」

「い、いや、タイミング、ここですか? きゅ、急すぎて」

「うん、だってめちゃくちゃ我慢してたからね。そこにおかえり、なんて出迎えられたら反則技」

「だからって、び、びっくりしました」

「うん、顔みて分かるよ」

 そう笑った成瀬さんはさらにそのままキスを重ねた。もはや頭はパンクしていた。角度を変えて食べるように繰り返されるキスに、力が抜けていく。生活力がない彼とは別の顔を見た気がする、一体成瀬さんはいくつ顔を持っているんだろう。

 しばらくして解放された私は、涙目で彼を非難した。