ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 「やっぱりそうだったのね。お母様がたまに言う言葉を聞いていたらそうかなと思ってた……お願い、黎は浮気しないでね」

 タクシーで真面目に言われて、黎は息をのんだ。

 「……どの口がそんなこと言うんだ?結婚式で誓っただろ?聞いてなかったのか?」

 「……結婚式ではみんな誓うんでしょ。でも、浮気するんでしょ?」

 黎は顔を覆って後ろへ倒れた。

 「どうして浮気すること前提なんだよ」

 「黎、モテるから心配なの。私、こんなだし……」

 「また、始まった。ネガティブ百合。こんなに毎日可愛がってやってるのにまだ不安なのか?」