「黎はね、このエンペラーペンギンみたい。王様って感じ」
大きなペンギンのぬいぐるみを抱き上げて、こちらに向けて見せている。
「何言ってんだよ、全く……訳わかんないこと言うなよ」
「ふふふ。だって、遠くを見てる感じとか似てる。いつも数歩先を見てるでしょ。私、目の前のことで精一杯になっちゃうから、黎がいると助かるわ」
「そうだな。すぐ迷子になる妻がいるからな。俺が地図を見て、進んでいかないとだめだろうな」
「それに、あなたは会社をいずれ経営していくんでしょ?それなら、間違わない道を行かないとね。みーんなついて行くから、もし黎が道を間違えたら全員一緒に迷子になっちゃうわよ」
あっけにとられて百合を見る。にこにこしている。



