「さあ、あなた。これを破棄しましょう」
そう言って、懐から紙を取り出して見せた。結婚契約書だった。
「お前、これどうしたんだ。どうやって……」
「柿崎にここへ来る前に見せてもらったのよ。私には見る権利があるわよね。大体、私に何も聞かずにあなたがこんなものを契約させたこと自体、私許してないのよ。あなたどういうつもりだったの?」
「……紗江子、卑怯だぞ」
「卑怯はどっち?百合さんに謝ってちょうだい」
「母さん、もういいよ。俺にも責任がある。父さんに契約でもいいから百合との結婚を認めて欲しかった。そうしないと俺から逃げようとする彼女をつなぎ止めることができなかったんだ。こんな方法しか思い浮かばなかった俺も悪い」



