ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 そして、にっこり笑いながら低い声で続けた。先ほどの陰口を言った女性の顔を見ながら……。
 
 「ただ、くだらない陰口はおやめ下さい。今後そういう言葉が耳に入れば、私たち家族への侮辱と受け取らせて頂きますので、そのおつもりでお願い致しますね」

 そして、後ろを振り向き、夫を見つめるとこういった。

 「ねえ、あなた。それでいいわよね?」

 「……ああ、そうだな。彼女はもう家族だからな」

 彼もひきづられるように答えた。紗江子の言いたいことはわかっている。自分も先ほどの騒ぎを少し見ていたからだ。そして予想通りだと思っていたのだ。

 静まりかえったその場に黎が前に出て、笑顔で話し出した。