「黎。ハイヒールにドレスの彼女を引っ張って走るなんて、大事な女性を困らせるようなことしてはダメと教えてきたはずよ」
そう言うと、傍らに立つ百合をじっと見た。
「百合さん。初めまして。私が黎の母の紗江子です」
百合ははじかれたように紗江子を見て、頭を下げた。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。栗原百合です。黎さんとこのたび結婚させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします」
「母さん。来るなら来るって言ってくれよ。準備もしておいたのに……」
「もう、父親と同じことを言うのね。そういうところは親子なのかしら?黎、百合さん、結婚おめでとう。百合さん、私あなたの先月のパリ公演見ました」



