ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 「あら、おばさま!久しぶりだわ……帰国されたのね」

 「え?」

 百合は自分の手を握ったまま、そちらへ走って行く黎に引きずられるようにハイヒールで走った。静香達も後から付いてくる。紗江子はまっしぐらにこちらへ走ってくる黎に目をやり微笑んだ。そして、夫を正面からじっと笑顔で見た。

 「あなた……黎の幸せを喜んであげましょう。祝福するのが親の役目よ。邪魔してはだめ。黎がやっと選んできた素晴らしい女性なんだから」

 「……紗江子」

 「……っ母さん!」

 側に駆け寄ってきた息子を見た彼女は、ひと言言った。