ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 「は、初めまして……は、蓮見静香です」

 しどろもどろになる静香を見て、百合も驚いた。まさか、これって……。

 「神楽さん。静香さん。助けて頂いてありがとうございました」

 百合は頭を下げた。

 そこへ、入り口付近で大きな声がした。黎の父である社長の声だ。黎達は驚いて、そちらを見た。するとそこには、和服姿の紗江子とそのかたわらにスーツ姿の奈津が立っていたのだ。

 「何で、先に連絡してこないんだ?身体は大丈夫なのか?」

 黎の父がアワアワして、久しぶりに会う妻の手を取って、抱き寄せた。

 「……母さんだ!」