「そうね。正直以前は皆、堂本君に釘付けでどう落とすかが話題だったけど、あまりに女の子に興味がないので静香のお兄さんと変な噂が流れていたくらい。ようやく意中の人ができたと思えばピアニスト。これじゃあ、私達に勝ち目はなかったはずよね」
「……すみません」
百合は頭を下げた。静香が左右に手を振って答えた。
「いやだ、謝らないでよ。たぶんね、今日も特定の人達が攻撃してくる可能性が高い。だから、何を言われても気にしないこと。言い返すのは最初私達に任せてちょうだいね。頭にきても殴っちゃだめよ」
静香が真面目に言う。他の二人と黎は笑い出した。
「……静香。お前、自分がしょっちゅうキレているからって、誰でもそうだと思うなよ」
「だって。腹立つじゃない。あっちだってひっかいてきたことあるし……」
百合はびっくりしてしまった。
「ほら、静香ったら変なこと言わないの。大丈夫よ、百合さん。静香はね、口が悪いから喧嘩になるの。私達がいるから大丈夫よ」
「はあ……よろしくお願いします」
百合はとにかく言われたとおりにしようと思ったのだった。