ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 「お母さんの代わりに君を守ると伝えなくちゃならない。それにしても最近君が無口で従順すぎて怖いよ。慣れない環境へ入って、緊張しているのもあるかもしれない。でも百合らしさを失わないで欲しいんだ。君はもっと無邪気だったし、俺が友達になりたいって最初頼んだときだって、じらしたりする面白い女の子だった」

 「そうね。そういえばそうだった。少しわがまま言ってもいいかな?」

 首をかしげる彼女を膝に乗せて、背を撫でる。

 「いいぞ。どんなわがままだ?」

 「週に一日はこちらに泊まりたいの。そして、自炊させて欲しい。ここにお手伝いさんとか入れないで欲しい。全部私がやるから……」

 「なんだそんなことか。いいぞ、もちろん。週一日と言わず、もっとでもいい」

 「ほんとに?でも、気を悪くされるでしょ。本邸を逃げ出してるみたいで……」