「百合。嫌ってなんていないよ。自分を捨ててあんな契約にサインした君を父は嫌うどころか尊敬しているようだ。ただ、百合がコンサート活動や留学など夢を捨てられないんじゃないかって言うんだ。君の夢は捨てなくていいんだ。いずれ徐々に実現できるようにするから……」
百合は黎にしがみついた。
「そんなことはいいの。黎と離れることより大変なことなんてないもの。何でも出来る。そうだ、お披露目会はどこでやるの?」
黎は百合の髪を撫でながら答えた。
「ホテルの広間を借りる予定だ。ピアノを弾くんだから挨拶はしなくてもいいぞ。俺が適当にするから……」
「いいえ。きちんとご挨拶はさせて。あなたを非難させる要因を少しでも取り除きたい」
黎は彼女の顔を見て話した。



