「お父様。いえ、堂本社長。私のことは何を言われても耐えます。今までもそうやって生きてきました。でも黎さんを悪く言われるようなことだけは嫌です。そのために一度は別れようと思ったんです。何かあれば私のせいにしてかまいません。よろしくお願いします」

 要は彼女の潔い言葉を聞いて、社長夫人としての資質は十分あると見直した。

 「わかった。その契約を交わそう。それでいいんだな、黎」

 「はい。ただし、彼女を尊重して下さい。決して家の中で彼女に辛い思いをさせないと誓って下さい」

 「もちろんだよ。彼女が嫌いなわけではない。百合さん、黎を頼むよ」

 百合は嬉しくて涙を流した。

 「はい。彼の支えになるよう努力致します」