黎は百合を見てにっこり笑った。

 「母は全面的に俺の味方だから、母が父を説得するだろう。心配いらないよ。父が母に言われて陥落するのが早いか、君に陥落するか、時間の問題だと思うがそれまでは契約しよう。契約破棄になっても、俺は君を離すつもりはない。何が起きても君を守るよ」

 百合は笑った。

 「黎のためなら何でもする。ピアノを弾くなと命令されたとしてもいうことをきくわ。私はあなたとピアノを比べる気は毛頭ない。あなたを愛してる。今日よくわかったの。あなたが友人になったら生きていけないって……」

 「百合。ふたりがしっかりしていれば、どんな形だろうと関係ない。何があっても一緒にいる。最悪、結婚なんてしなくてもいい。誰に認められたいわけでもない。君と生きたいんだ」

 「私もあなたと生きていきたい。ずっと側にいて……私もあなたが許す限り側にいます……」

 黎は彼女を抱き寄せ、キスをした。
 そしてまた、寝室へ戻った。夜はまだこれからだった。