百合は自分の浅はかさを痛感した。そして、黎の深い自分への愛に何を返せるのか考えた。そう、ピアノより彼が大切だった。彼が望むものをあげると決めた。これが、彼と友達に戻らなくても一緒にいられる方法なら受け入れようと決めた。

 「わかったわ。あなたと結婚します。契約でも何でもいい。お父様が私を認めて下さるまで、契約しましょう。でも、お父様はすぐにも結婚解消を求めて契約破棄するように言うかもしれない」

 「そうだな。だが、俺は百合と別れない。父はわかっているはずだ。こんな書面は所詮婚姻届を出すための言い訳でしかない。父がこの結婚を破棄するように言うときは俺との関係が終わるときだと……」

 「黎……それより周りは私を許してくれるの?」

 「父が認めて結婚したという形が大事なんだよ。そうすれば会社関係者は何も言えない。実は契約だろうと何だろうと、その結婚という形が重要なんだよ」

 「イギリスのお母様は?」