「一年更新で契約結婚をする。俺は君を妻として、そしてビジネスとしてピアニストの栗原百合に援助もする。百合はピアニストとしての売上の半分は堂本コーポレーションへ入れる。堂本コーポレーションの次期社長夫人としての仕事もしてもらう。母がいないのでそういった社交界も少なからず母の代わりに出ないといけない。俺も同伴のことが半分だ。つまり、堂本コーポレーションの広告塔としての役割を自ら果たすんだ。その代わり、百合は自分がやりたい仕事をすることができる。今までは事務所の顔色をうかがっていたが、自分の好きなようにしていい。全部俺が援助する」
百合は黙って彼の顔を見つめた。
「俺たちは表向きには普通の夫婦だ。一緒に暮らす。俺の妻として夜も一緒に過ごす。つまり恋人同士のままだ。契約であることを知るのは父と母。それと柿崎ら側近のみ。堂本家は百合のことで何か会社に不都合が起きた時、あるいは父がどうしても君を認められない時に結婚を解消する。逆に君がこの堂本コーポレーションのための社交や俺との生活が嫌になったら、一年契約だから契約破棄して別れることも出来る」
「……どうして、こんなことを?」



