百合は彼の射るような瞳に吸い込まれてしまいそうだった。泣きそうだったが、話すために心を鬼にした。
「私、パリへ留学のお誘いを頂いたの。今の事務所はおそらく戻ってもうまくいかないと思う。思いきって、しばらく向こうへ留学しようかと……」
「……それで、俺を捨てる訳か」
黎はグラスを置くと、吐き捨てるように言った。
「黎!私、日本にいたらあなたと会わずに生きられる自信がないの。今だって、こうやってあなたが恋しくてしょうがない。だから……」
黎は、駆け寄って彼女を強く抱きしめた。
「百合。俺はどうなる?お前がいなくなって、捨てられて生きられると思っていたのか?そんな薄情な男だと思われていたんだな」



