「染み入るような曲だ……心が揺さぶられる……」 百合はピアノの蓋をして、立ち上がった。 「……黎、ごめんなさい」 「どういう意味の謝罪だ?」 ふたりは真正面から対峙した。 「友人に戻るしかないと思った。このままでは、あなたのご両親は決して私との交際を認めないだろうし、いずれあなたに他の相手が出来て捨てられるのは嫌だった。自分から先に離れようと思ったの」 「……俺を信用してないんだな」