「すみません。私からお話しすべきことでしたね。本当にすみません」
また、泣き出す彼女を神楽はため息をついて見た。
「百合。あいつの家のことはわかっているだろ?今は何も考えず付き合っているんだろうが、いずれ大企業の御曹司のあいつには結婚相手が探されるだろう。あいつの父親が認める女でないとおそらく結婚はできない」
百合はわかっていたのに、流されている自分に嫌気が差した。黎に夢中になっている自覚はある。そして、彼も自分を深く愛してくれていることもわかっていた。
「わかっています。もう少しの間だけでいいの。彼といたいの」
神楽に言った。付き合いはじめのこの時期から、こんなことを言われる。百合は辛かった。
週末から地方のコンサートが始まった。主要都市十カ所。



