ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 泣き続ける彼女を神楽は少し待った。もっと早く相談しておけば良かったと思った。
 
「とりあえず、親父さんにはこれから地方へ出るので時間がないと断っておく。あちらが今後どう出るかはわからんが、覚悟はしておけ。俺もお前と今後どうするか考えよう」

 コーヒーを入れてきて、目の前に置いたとき、百合は落ち着いていた。

 「ごめんなさい、取り乱してしまって。ありがとうございました」

 頭を下げた。

 「百合。そういうこともあるから俺はお前に俺と付き合わないかと言ったんだ。わかっていなかっただろうがな。堂本から昨日報告された」

 百合は顔を上げて神楽を見た。そして、視線をまた、下へ下げた。