百合は音を立てて椅子から立ち上がった。手がブルブルと震えている。神楽は彼女の様子を見て、自分も立ち上がった。
「百合、落ち着け。俺はやめた方がいいと忠告した」
百合は下を向いて、涙を流した。神楽は彼女の横に立ち、背中をさすってやった。
「……信じられない。何も考えてない。あの人達が許すはずない」
「……そうだな。親父さんも年取ったんだろ。自分のしてきたことを肯定するためにお前という素晴らしい娘がいたことを公表……」
「やめて!」
百合が机を叩いた。神楽は百合を座らせた。そして、ティッシュペーパーの箱を彼女に渡した。泣きながら鼻をかみ始めた。
「百合。有名になればいずれこの問題も表面化する可能性がある。覚悟は必要だ。それをどのように片付けるかも決めておく必要もある」



