静香が戻ってきた。ふたりで目を見合わせてため息。このうるさい静香に小さいときからふたりして振り回されてきた。

 静香こそ、早く誰かに縁づいてほしい。ふたりの平安のために……。会うたびに誰か紹介してやれとお互いでなすりつける。
 
 静香が黎を恋愛相手に選ばないだけまだましだ。
 黎が女性に興味ないのをよく知っているし、冷たいのも知り尽くしている。さすがにお嬢様だから、優しい男がいいと豪語している。

 「静香。好きな男は出来たのか?」 

 黎がいつものように聞く。

 「そうね。いるにはいるんだけど、あちらがあまりこちらに興味がなさそうなのよね。どうしたらいい、黎?」

 またもや、広也と目を合わせて盛大にため息。だめだこりゃとふたりは小さい声で言って笑った。