作ったのが彼女だったので、片付けは黎がやると言ったらうなずいた。彼女はピアノの椅子へ向かった。
「よし。じゃあ、来週末のレコーディングまではよい子で待っていてやる」
背中を向けた黎は、百合には聞こえない小さい声で呟いた。
片付け終えた黎は、明日早朝から仕事があるので、準備のために今日はマンションを出て自宅へ戻った。
最近、終業後の車の迎えをいらないと言う黎に、柿崎達は不審に思いながらも問い詰めずにいた。
マンションへ熱心に通っているのはわかっていた。そして、一度マンションを見に行ったところ、彼女らしき人を見た。
黎は頭がいい。女性関係にそういう賢い頭を使ってこなかった。使うとすれば追っ払う方法を考えるのみ。
女性を捕まえるために今は使っているであろうその賢い頭で何をしているのか、想像もつかないが、失敗しているようには見えない。柿崎も新婚だったので、黎を放置していた。



