ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 
 「百合?」
 
 「れ、練習しなくちゃ。そういうお話しはまたにしてね。お願い……」
 
 黎は赤くなって下を向きながらもごもご言う百合にため息をついた。
 
 「今日は特別に許してやる。でも、そう待てないからな。とにかく、レコーディングまでは体調を整えておく必要があるだろうしな……」
 
 「ありがとう。頑張って良いレコーディングにします。だって、黎さんが会社で私を推薦してくれたって聞いた。黎さんに恥かかせないように私頑張る」
 
 そう言ってにっこりする百合に黎は白旗を揚げた。

 食べたものを黎が片付けるので練習するように言うと、申し訳なさそうにする。