黎はおどおどと彼に問いかける彼女をいたずらっ子のような目で見つめながら答えた。
「それだけだと思う?俺は君にもわかるように態度に出してきたつもりだったけど、わかってない?君は俺をどう見てる?君にとっても、俺は特別な人になりたいんだ」
百合は目をつむって、息を吐くと彼を見据えて意を決して答えた。
「あなたは私にとって大事な友人だけど、特別な人よ。色々教えてくれるし、一緒にいてとても楽しいわ」
「そう。じゃ、君の言う特別な人は男として見たらどう?君の相手として……」
「黎さん……」
「俺の気持ちはわかっているだろ?君が好きだ……その瞳に映るのが俺だけならいいとずっと思ってる。その口から出る男の名前は俺だけにして欲しい。リサイタル以外で君のピアノを聴くのは俺だけがいいんだ。すべて君を独り占めしたい」



