ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 「それなら、黎さんが来るときは私来ないようにしますから、言ってね」

 「馬鹿だな。君のピアノを聴きたいんだ。君がいるときはいつも来たいくらいだよ。君が弾いてくれるなら自分の聴きたい音楽はしばらく君のピアノだけでいい……僕ひとりのために弾いて欲しいんだ。独り占めしたいんだ、君のこと」

 黎は射貫くような瞳で彼女を見つめた。
 百合は息をのんだ。自分のピアノを独り占めしたいと言われたのは初めて……。
 百合は自分のことを好きだといわれるより実は嬉しかった。自分にとってその言葉がどれだけ力があるか、はじめて気付いた。すごい衝撃だった。そして赤くなってしまった。

 「……あ、あの、その……」

 真っ赤になってオロオロする彼女を黎は嬉しそうに見てる。

 「何?」