ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 すぐに、話を変えた。

 「グランドピアノを気に入ってくれたことだし、これ渡しておこうかな」

 そう言うと、合鍵を彼女に向けてテーブルへ置いた。

 「え?これ……」

 「そう、この部屋の合鍵。渡すつもりだったから、持ってきたんだ」

 「……あの。黎さんはここにはおいでになることあるんですか?」

 「もちろん。音楽を聴くだけでもこの部屋は素晴らしい。好きな曲を好きなボリュームで聴くことが出来るし、この通り食事も出来て、お酒も飲めるときてる。最高だからね。僕も休みの日や、リセットしたいときに来るんだ」