「先ほども言ったけれど、このピアノ、見た目も美しいうえに弾いてみると素晴らしいのがわかるわ。お言葉に甘えて、たまに弾かせてもらってもいいかしら?私も大学や家以外でこういう所があると助かるわ。実は私、マンションにはアップライトしかないの」
「え?」
黎は驚いて、百合をじっと見つめた。
百合はしずかにワインを一口飲むと話しだした。
「恥ずかしいけど、あまりいい育ちではないので、借りたマンションに防音設備もないし、消音にして弾いているの。グランドピアノは大学やプロダクションの部屋を借りられたときに弾くだけ。まさか、コンクールの受賞者になれるとは思っていなかった。その程度なのよ」
「とんでもないよ、君のピアノはとても透き通った音がする。さっきも言ったとおり、白い花は君のピアノのイメージなんだ。黄色は僕の好きな色であり、きみへの応援歌」



