ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない


 「リサイタルの後は、その人が弾いていた曲が弾きたくなるの。嬉しい!」

 そう言って、あっという間に座ってピアノの音を一音鳴らす。

 ポーンという音が空中に舞う。
 響きもいい。

 「このピアノ。とても良いタッチ、そして柔らかい音。素晴らしいわ……」

 そう言うと、今日のピアニストが弾いていた曲を弾き始めた。
 もう、彼女の世界。静かに部屋を後にして、軽い食事を注文した。

 ピアノのあるサロンには食事の出来るテーブルもある。
 お酒も飲めるようにサイドボードも備えてある。

 一番広く、明るい部屋。窓が大きく、夜景も映す。