ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 
 「え?大丈夫?」
 
 百合は後ろにがっくりと倒れる彼を見て、心配した。
 彼女を斜め見して小さい声で答える。

 「嫌われたのかと思った。避けられて……」

 百合は彼のそんな姿見たことがなかった。いつも自信満々だから……。

 「そんな……嫌いになったりしない。勘違いさせてごめんなさい。そうじゃないの、だって私のことを噂されたら迷惑かけてしまうから……」

 黎は顔を上げた。手を握る。

 「だから、迷惑なわけない。言っただろ、俺が一緒にいたいんだよ」