「何言っているんだ。そんなことは関係ない。俺が君と出かけたくて頼んできてもらっているんだ。君は何も心配しないでいいんだ」
百合は黎の表情を見て、おびえた目をした。
「そんな目をするな。ごめん。大丈夫だから心配しないで……」
そう言うと、彼女の目をのぞき込んで、必死に口説いた。そして、手を引いてタクシーを捕まえると、彼女を乗せた。
「あ、あの……」
百合を奥へ座らせると自分も座って、マンションの住所を言った。
「黎さん……どこへ行くんですか?」
「イギリスで初めて会ったとき、仕事とプライベートで来てるっていったの覚えてる?一番の目的は母へ会いに行くことだったんだ。母は身体の調子が悪くてイギリスで療養中なんだ」



