春子は授業が終わるのがユーウツだった。



帰りたくない。



母と父はいつも言い争いをしていた。



5歳上の兄は引きこもったまま部屋から出てこない。



正直、重い。



家に帰ると胸がつぶれそうだ。



学校からの帰り道、そんな事を春子は涼子に話すのだった。



そんな時涼子はいつもこう言ってくれる。



「そんなこと、たいした事じゃない、いつか家を出れるんだから。乗り越えるには勉強するの。誰よりも頭が良くなれば、大丈夫」



そんなこと、たいした事じゃない。



つらい時、涙をこらえて春子はおまじないのようにその言葉を繰り返した。