「手袋…廉にあげとくで?」

「絶対あげて下さいね!」

「うん、絶対喜ぶわ!
廉青大好きやねん!」

「本当ですかっ!?
良かった~!」


廉君の好きな色は青。
忘れない様にしなくちゃね!


駐車場から差し込む光が
だんだんと弱くなって来た

あ……
もう7時になるんだ…。


「そろそろ帰る時間ですね」

サヨナラを言い出したのは私。


店長は後部座席から
運転席に移動して来た

ハンドルを握りしめた
両手の上に
頭を乗せうつむく店長


「……店長?」

頭を上げた店長の顔は
あまりに寂しそうで
私まで泣きそうになった

……そんな顔しないで…


―――離れたくない


店長の心の声、
私の心に届いたよ
でもソレは
店長の声に聞こえて
私の心の声でもあるんだ


「そやな……行こか」

「…はい」


あんなに楽しかったのに


無言の帰り道



「ココまでで大丈夫です、」

「家まで送るで?」

「う~ん…、
けど近所まで行ったら…知り合いとか…色々と大変だし。」

「…そやな……分かった、
さくらちゃん?」

「はい?」

「こっちむいて?」

ソコで初めて私が
うつむいてる事に気付いた

顔を上げると
店長は愛を確かめる様に
私にキスをした

何度も角度を変えて
深い深いキスをした


…好き?
…好き。


声の聞こえない質問と答えが
キャッチボールの様に行き交う


こんなに…好きなのに


不安で仕方がない


店長も同じなんでしょう?

不安で一杯の車内には
私達の激しい呼吸の音が響く

2人の唇が離れる
でも
心も離れて行く訳じゃない

「…また…すぐ会おな」

「はい」

「じゃあね」

「…サヨナラ」