「今度さー
一緒に映画
見に行かへん?」


「……映画?」

「うん、映画デート。」


映画デート。


「はいっ!!!」


「よかった!
いつにしよっか?
でも土日は仕事だしなあ…」

「平日にしましょっか?」

「うん、そうしてくれる?
冬休みやし、」

そうだよね

冬休みだから、

平日だって遊べちゃうもん

…あっ

けど…



「……でも奥さんには?」


店長の少し驚いた顔に
私はハッとした

「仕事って言っとくわ
………ゴメンね、
そんな事まで気にさせて」

暗くなる店長

嫌だよ、

「そんな事ないですよっ!
私家族想いな店長
大好きですからっ!」


―――カーッ!

顔が赤くなるのが
自分でもわかった

「さくらちゃ~ん!
…ありがとう」


―――ギュッ!


暖かい臭いのする
店長の胸に包まれた



店長に
抱きしめられるのは
2回目だったけど


ドキドキは
慣れる事、
ないみたい


「誰か来ちゃいますよ」

店長に抱きしめられたまんまだったから
少しこもった
私の声に店長は
より一層力を込めて
抱きしめた


「いいじゃん、
誰か来たらチューしちゃう」


強く抱きしめられたせいで
店長の顔は見えないけど
きっと八重歯覗かせながら
笑顔なんだろうな



―――ギュッ

私もキツくキツく
店長を抱きしめた


今だけは
誰も来ないでね