店長のおかげだよ!

―――ありがとうございます

私も目で返事をした




「俺は行かない」




「お父さん…、
最期位見送ってあげましょう」
お母さんの
説得させる様な声


「行かない。
そんな軽い気持ちで
絶縁したつもりはない
お母さんは行って来なさい」

………どうして?
最期なのに…
そんな寂しい話し無いよ…

「お父さん、
お願いします
見送ってあげよう?」

でも


私の悲痛の願いも
届かなかった


それから何時間たっても
話しは
並行線のままだった

―――お願い

―――駄目だ

その連続だった

長い沈黙が続いた

チラッと時計を見ると
時計の針が19時を指していた


「店長?
もう7時ですけど、
家族心配しちゃいませんか?」

なるべく小さい声で囁いた

店長はうなずき

「……じゃあ…
申し訳ありませんが
俺はここで失礼します。
突然おじゃましてすいませんでした」


「ありがとうございました。」


家族全員がお辞儀した

「さくら送って来なさい」

お父さんに言われ

私はカーディガンを羽織った

「はい」



店長と2人で出た外は

さっきより寒さを増していた


「寒いね」

「寒いですね」


お父さんは来てくれなくても
お母さんだけでも来てくれるという事が
嬉しかった


「店長ありがとうございます」

「俺は何もしてないよ
しかもいい結果じゃなかった」

「お母さんが来てくれるだけで私は嬉しいんです」

「そっか。じゃあね…」

「さよなら……」

さよならって言ったのに
何か別れるのが寂しかった

その気持ちが伝わったのか
店長もなかなか車に乗りこまなかった

「さくらちゃん?」

「…はい」

「大丈夫?」

「…大丈夫です、」

「うん、じゃあねバイバイ」

店長は優しく
頬に触れた

寒いのに暖かい手

ホッとするな

店長の手。

心強くなった


店長の車が離れるにつれ
やっぱり寂しくなったけど
大丈夫、

私達の為に
言いたくなかっただろう
自分の過去まで
真剣に話してくれた店長


ありがとう。
店長。