「はい、日暮です」

店長が自分の事
日暮って呼んでいるのは
ちょっと違和感があった




「…うん何?
あー…
留守電聞いてないわ
…あー……そ…」
いつもより低く
聞いた事の無い
店長の怖い声だった

「…じゃ」

受話器を乱暴に置く店長

「…奥さんから?」

店長は
微笑んだけど
無理してるみたいだった

「うん…
もうすぐ着くって」
店長ははーっと
深いため息をついた

「…じゃあ帰ります!」」

「ゴメンな?
もうちょっと
ゆっくりしてって貰いたかったんやけど
あーイライラするわ」

「大丈夫ですよ!
ご馳走様でした!」

「…ゴメン」

「お邪魔しました!」

―――ガチャ

外は寒くて
店長のぬくもりは
すぐ冷めて行ってしまった



「さくらちゃん
バイバイ!」

振り向くと
店長は
窓を開けて
大きく手を振っていた

「さよなら!」

「また来てなー!」


少し微笑んで
前を向き直した

「また来てな。」


「はい。」

とは答えられなかった。





もうここには来ない



そう。
決めていたから