五月になり、ゴールデンウイークになった。学校は休みだったが、部活動はあった。
先輩たちのいいところを見て、自分に取り入れようと思う。そんなことを思ったのは卓球部の先生からの言葉だ。
「一年生、入って来たばかりだと思うけど、先輩たちをよく見て、やってみて下さい」
 ある日の部活動のことで、先生は一年生全員を集めて言った。いつものように練習を先輩たちに教わり、時は過ぎて、他の中学生との練習試合の日になった。私たちは見学。
「今日は宙夜中学校(そらやちゅうがっこう)で試合だから。分かっていると思うけど。ここの中学生は強くて能力が高い人が集まっているから、用心して臨むように。オーダーは私の方で決めてる。いいね?」
 先生は目を見開いて、卓球部メンバーに強い口調で声を発した。
「先生。聞きたいことあるんですけど、恵美は現役でやってるんですか?」
 築先輩は真剣な表情で先生に聞いていた。なんだろう……
 私はその様子を見ていた。
「やってますよ。築。前の小学校の同級生でも、今は敵同士で練習試合の相手だからね」
 先生は黙って、築先輩を見た。他の先輩たちも心配そうにしていたり、先輩たち同士で目を合わせて、大丈夫かなと不安げそうであった。不思議そうに先生と築先輩の会話を聞いた。それに気づいたのか、花音先輩が私に話しかけてきた。
「築はね。恵美って子にいじめられていたの。宙夜中学校とは前から練習試合をすること決められていたから。築は確認したかったんだと思う。本当にいるのかどうかを」
 花音先輩は細い目のせいで叱られているように感じたが、きちんと私に教えてくれた。一年生全員は花音先輩の話を聞いているのか耳で聞いていた。築先輩は抱え込んでいるものがあるけど、練習試合という部活動では逃げない。そんな先輩は強い。
「…一番エースとされる人を倒すこと考えていいけど、相手の傾向を見たりすることが大事だから。以上です。試合に出るメンバーは各自練習!」
 先生は両手を叩いてから、卓球部メンバーを見た。試合に出るメンバーは決まっている。葵先輩はシングルで。類・美央先輩はダブルス。二年生はシングルで参加する。試合に出るメンバーは各自練習をした。ダブルスの先輩方は二年生の七海・築先輩ふたりで相手してから、ダブルス同士で話し合い練習を行っていた。
「これから、試合を始めていきます。各自、礼」
 宙夜中学校の先生が号令をかけた。先輩たちも礼をして、宙夜中学の卓球部とお互い向き合った。宙夜中学の卓球部は私たちを睨みつけるように見ていた。
築先輩を見ると、宙夜中学生の恵美を怖がっているのか、固まっていた。
 それを見た花音先輩は築先輩の背中を叩いて、築先輩を元に戻した。先輩たちは持ち場に戻り、自分のラケットを取り出した。先生は先輩たちを呼んだ。
「…オーダー決めました。一番横道葵、二番宮本七海、三番渡部類・小早川美央、四番古畑花音、五番御子柴築。これでいきたいと思います。メンバーはいつもと変わらないけど。誰が負けても勝っても自分のペースでやっていて。相手の特徴掴んで思い切りやってきてください。あと、なにか言いたいことある?」
 先生は試合にでる卓球部メンバーに聞く。
「なにもありません」