「そっか。サラ、そうだったんだね。良かった」

話を聞き終えた心が、小さく呟く。

「ああ。久住のおかげだよ、本当にありがとう」
「ううん。最初に伊吹くんがサラに声をかけてあげたからだよ。サラの元気がないのに気付いて、優しく聞いてあげたからだよ。良かったね、サラ。伊吹くんと出会えて」

そう言って心は、ふふっと昴に笑顔を向ける。
昴はドキッとして思わずうつむいた。

「でもそっかー、サラってそんなにお嬢様だったんだね。確かに雰囲気がエレガントだったもんな。ショッピングモールで選んでたティーポットも、花柄で上品な感じだったし。私、凄い人と友達になったんだね。タメ口とかきいて、大丈夫だったのかな?」

心は、あはは!と明るく笑う。

「でも、どんなバックグラウンドでも、サラはサラだよ。私に気さくに話してくれるし、笑顔が素敵で優しくて。私もサラと知り合えて良かった」
「久住…」

昴は足を止めて心と向き合った。
柔らかい表情で自分を見つめてくる心に、昴は胸がキュッと掴まれたような切なさを覚える。

「久住、俺…」
「伊吹くん、目が潤んでる」
「えっ」

昴は自分の顔が一気に赤くなるのが分かった。
胸がドキドキと高鳴る。

「久住、俺…」

何を言おうとしているのか、自分でも分からない。
とにかく昴は、今の気持ちを口にしたかった。

「俺、俺は…」

するとじっと昴を見つめていた心が、ふっと頬を緩めた。

「伊吹くんの目、うるうるしててイルカみたい。かわいい」
「…は?」

心は、ふふっと笑ってからまた歩き始める。

昴はその後ろ姿を見て、はあーっと深いため息をついた。