「そういえばさ、さっきの1人で居たとき呟いてたのって、この前習った竹取物語の文章でしょ?」

月を見て、思い出したように夏海が尋ねてくる。

「聞いてたのかよ。恥ずかしいからやめろって」

「いいじゃんか。すごく嬉しかったよ。
じゃあさ
『この衣着つる人は、物思ひなくなりにければ、車に乗り
て、百人ばかり天人具して、昇りぬ。』って覚えてる?」

「俺が読まさせられたとこじゃん」

「考えてたんだ。かぐや姫は衣を着ちゃったら、想いも何もかも失って、未練もなくなったけどさ、あたしはどうすれば忘れられるのかなって、結城のこと」

「夏海・・・。」

「でももうあたしには天の羽衣は必要ないよね。
だって、あたしには月の都じゃなくて、結城の隣が帰る処だから。」

涙を浮かべながら微笑む夏海は、星々の明りに照らされて、驚く程綺麗だった。
大切なモノを喪った、かぐや姫とは比べるべくもないほどに・・・。

「おう。だからもう独りで悩むのはやめろよ。
それに・・・俺だって寂しいだろ」

「あはは、そうだね。
だから・・・これからもずっと傍に居てね。」

どちらからともなく口付けを交わす。



そして星々が祝福するこの場所から・・・。