驚いている私に、花村くんはいつもと少し違う、いたずらっ子のような笑みを浮かべたあとで、すぐに野田くんのほうへ向いた。
それから「うん、好きなんだよね、桃」と、さっきの野田くんの質問に答える。それに対して「へぇ」と、聞いておいたわりには興味なさそうに野田くんが返事をして。ふたりはまた別の話をし始めた。
び、びっくりした……。と、野田くんに気づかれないうちに、自分の机の上に視線を戻した。
次の現国の教科書を意味なく開いて、ページをペラペラ捲ってみたりなんかして、心を落ち着かせる。
好きなんだよね、桃。
今さっき聞いた言葉が、花村くんの声で頭の中で繰り返される。
その言葉に、深い意味なんてないことはわかっている。でも、それでも、こんなのどうしたってドキドキしちゃうわけで。
まるで自分のことを言われているようで、くすぐったかった。だけど大丈夫。勘違いはしないから。
ただ、どうして花村くんは、私のほうを見ていたのだろう。
チャイムが鳴るまで考えてみたけれど、その答えは思い浮かばなかった。


