花村くんが眠るのは




「それ、何食ってんの」

「グミ。食べる?」

「いいの? サンキュー」

「うん。他にもあるから、好きなの選んでいいよ」



授業と授業の間の休み時間、花村くんとその前の席の野田(のだ)くんがお喋りをしている。それをBGMにして、私は次の授業の準備をしていた。



「じゃあ、これちょーだい」

「うん。それ美味しいやつ」

「まじ? てかさ、お前桃好きなの? 全部ピーチ味」



しっかり聞こうと思って聞いていたわけではないけれど。野田くんのその言葉がやけに大きく聞こえた気がして、ついぴく、と反応してしまった。


びっくりした……ももって、そっか、桃か。


桃が好きかどうかの話であって、決して自分のことではないのに。どうしても耳に神経が集中してしまう。


だけど花村くんの返事は、すぐには聞こえてこなくて。気になって、ゆっくりと気づかれないように右隣を見た。


そうすればどういうわけか、目が合ったのだ。その相手はもちろん、花村くんで。



え……え、えぇ?



視界の端っこに映る野田くんは、机の上に並べているお菓子の袋の裏側をじっと見ていて、この状況には気がついていないみたい。


私は花村くんがどうしてこっちを向いているのかわからなくて、思わず目を見開いてしまう。