花村くんが眠るのは




席替えをしてから、花村くんと初めて言葉を交わす。昨日まで休んでいたせいもあると思うけれど、同じクラスなのにすごく久しぶりに会ったみたいな感覚がした。


さて、今はとりあえず、何か別の話題を。

ドキドキしてしまわないような、普通の話をしなければ。せっかく、話しかけてくれたんだから。



「あ……眠く、ないの?」

「え?」

「ほ、ほら、花村くん、今日授業中寝てなかったから」

「うん、そうだね。寝てない」



よし、普通に話せてる。この調子だ。

花村くんをじっと見上げてみると、目が緩やかに細まる。そして今度はなぜか、口角が上がった。なんでだ。面白いことは何も言っていないのに、花村くんが笑っている。



「え……なんで笑う?」

「ううん、いや。もしかして、おれのこと見てたのかなって」

「あ……、えっと……」



やばい、だめだだめだ。全然だめだ。違う意味でドキリとする。それを指摘されてしまえば、誤魔化すことは困難だ。

どうしよう、と何か上手い返しがないか必死に考えていると、花村くんは「はは」とまた柔らかく笑った。