花村くんが眠るのは




「まぁ、柚原はいちばんいい席だもんね」

「いい席?」

「うん。窓側の、いちばん後ろ」



たしかに、今の私の席が人気ナンバーワンの席であることは間違いないと思う。出席番号がいちばん最後ってだけで手に入れることのできる特等席。

だけど私の場合、隣が花村くんだから特等席なのであって、そうでなければ何も特別ではない。だったらいちばん前でも花村くんの隣がいい。


ああ、本当に憂鬱だ。



「柚原? どうしたの?」

「あ、ごめん……うん、そうだね。すごくいい席」

「おれも今いい席だから、席替えしたくない」



一瞬ドキリと胸が鳴りかけたけれど、花村くんのそれは、いちばん後ろの席だからって意味で。決して私と同じ理由ではない。

ちくりと、胸に針が刺さった。



「ね。いちばん後ろの席だもんね」



花村くんの気持ちに合わせてみる。だってそれ以外にその席がいい理由なんて――





「違うよ」

「えっ?」

「いちばん後ろだからいいわけじゃないよ」



2回目の「えっ?」が口から放たれたのと同時に、花村くんに顔を覗き込まれる。なんでこのタイミングで目を合わせてくるのだろう。


ずるいなぁ、そんなの、ドキドキしちゃうよ。