隣の席の花村くんは、授業中いつも眠っている。




いつもと言っても、最初から最後までずっと寝ているわけではないけれど。ふと隣を見ると高確率で、机に顔を横向きに伏せて目を閉じている。

気持ちよさそうに、こちらに顔を向けてすやすやと眠っている。

その寝顔を見ることができるのは、窓側のいちばん後ろの席で、花村くんの隣に座る私だけの特権だ。


だけど、見ているだけではない。寝ている花村くんを、起こしたりもする。


授業中、座席順に先生から問題の回答を求められる時があるから。そういう時は起こして、どこが当たるのか教えてあげる。


そうすればいつも決まって、「ありがと、柚原」と、ふわりと笑ってくれるから。私はそれにいちいち胸をきゅんと鳴らしてしまう。

そして、当てられない授業の時はたまに、その寝顔をこっそりたっぷりと堪能させてもらったりして。

睫毛長いな〜とか、髪の毛ふわふわそうだな〜とか、肌が綺麗だな〜とか。

みんながなかなか見ることのできない花村くんの寝ている姿を、独り占めしている。