アマリーに案内されたその場所は庭園の隅っこの方にひっそりとあった。
 レンガ造りの花壇には色とりどりの花が植えられていて、その一画だけが目に鮮やかに映った。
 メリーが嬉しそうにそちらへ飛んでいく。

(へぇ、こんなところがあったんだ)

 一昨日リューに抱えられてこの庭園に降り立ったときも、もう薄暗かったからか全然気づかなかった。
 と、その更に隅っこの方にしゃがんで作業している人が見えた。

「ベルデ!」

 アマリーがそう声をかけると、麦わら帽を被ったその人は慌てたように立ち上がった。
 メリーはそこに人がいたことに気付いていなかったようで飛び上がって驚き急いでこちらに戻ってくる。
 ベルデと呼ばれたその人はひょろりと背の高い、想像よりもずっと若い男の子だった。

(なんとなく勝手におじさんだと思ってた)

「こ、これは聖女様……!」

 私たちが近づいていくと、おそらく私と同じか少し下くらいの歳の彼は帽子を取って深々と頭を下げた。
 私も同じように頭を下げて挨拶する。

「こんにちは。あなたが庭師さん?」
「はい! こちらの庭園を任されております。ベルデと申します」